2015年7月8日水曜日

カラスの教科書



小学生のころ、図工の授業でぼくはなぜかカラスの絵ばかり描いていました。多色使いが子どもの創造力を育む教育とばかりに、おもに暖色系のいろいろな色を用いることを期待してくる教師への反発からなのか、いまはその理由は判然としません。当時、先生から借りた一眼レフカメラで銀座をスナップ散歩し、モノクロで紙焼きをしていたことが、黒と白の潔い色構成に惹かれた理由なのかと推察するばかり。では、なぜカラスなのか。スケッチ用紙を前にしたとき、街なかでよく見かけたカラスが自然なモチーフとして思い浮かんだのかもしれない。先日、東京駅前のKITTE内インターメディアテクにてカラスのイラストが表紙に大きくレイアウトされたを手にしてめくったとき、一般には害鳥扱いされているこの鳥への関心が再燃しました。


このイラストを描いたのは、なんと出版元である雷鳥社の女性編集部員らしい。その女性はイラストだけでなくデザインも手がけている。余白がたっぷりとられたスペースに、ふんだんに味わいある手描きのイラストをレイアウト。するすると読み進められ、ページをめくる手も軽快に。しかも、この女性、自身でカラスに興味を覚えたことから、著者に出会い、執筆を依頼している。文章もユーモア交じりで軽妙。特異なフィールドワークにもとづく専門知識だけでなく、文才までも見出し、導き、書籍に結実させた編集者の手腕と熱情に感服しました。




構成、イラスト、文章が魅力あるから、数時間で読了。図書館で借りたものですが、手元に置いて、何度も読み返したくなる。カラスにまつわる先入観を一変させる名著だと思います。



たくさんの真実を知り、眉をひそめて目を向けがちな、この鳥への理解を改め、温かな視点で今後は見つめることができそうです。

LEICA M-E SUMMILUX50mm

追伸:代表取締役は雑誌「エスクァイア日本版」の名編集者。「撮る・書く・つくる・演じる」人のための本を中心に刊行しているそうです。とてもいい出版社だなぁ。