2017年12月26日火曜日

久野恵一さんのこけし


鎌倉「もやい工藝」のプライベートな居間に飾られているこけしを、久野民樹さんと麗子さんにお願いして見せてもらいました。久野恵一さんとは10数年毎月、工藝のお話を伺いましたが、いちどもこけしについて口にすることはありませんでした。麗子さんが言うように、たぶん郷土玩具への関心は希薄だったのだと思います。


そんな恵一さんでも、いくつかのこけしを飾っていた。そのことに興味を覚えました。嫌な物はいっさい身の回りに置かない人でしたから、ある程度、愛着はあったのだろうと想像します。これらのこけしは人から贈られたり、何かの記念にいただいたりと、恵一さんが選んだものではなく、また自分で買うこともなかったのではと麗子さんは話します。たまたま、恵一さんのもとに集まってきたこけしたち。こけしをはじめ、郷土玩具愛好家でもあるイラストレーター佐々木一澄さんによれば、いずれも昭和30年代以降に作られた、当時よく作られたこけしという感じのもので、今もヤフオクなどで容易に入手可能だそうです。


恵一さんは左から2番目のこけしをとくに気に留めていたと麗子さん。ぼくも、仮に恵一さんからこのなかから一本だけベストを選べと問いかけられたら、このこけしを選びます。おどけた表情と頭のかたちがたまりません(笑)。制作した工人は岩本芳蔵さん。「蛸坊主」と総称されていた型のこけしで、父であり師匠の岩本善吉さんの型。佐々木さんもこの晩年期とほぼ同時期のこけしを買ったことがあるそうです。この型でもう少し古い時期に作ったものは、もっと情味に満ちていて、さらに凄みのある表情をしているといいますから、観てみたくなりました。


左から3番目のは鳴子・桜井昭二さんのこけし。佐々木さんも大好きな工人だそうです。「昭二さんとしてはよく見る昭和40年代のこけしですが、そのなかでは佳い表情をしていると思います。顔の上部にちまちまっと描かれた表情、木地のフォルムも佳いです」とのこと。あまり一貫性はないものの、7本のこけしが不思議と調和していると佐々木さん。「時代が近いからか、醸し出す空気も近い気がします」。

ぼくは、恵一さんの眼あってのバランスだと思えてなりません。観る人の視点を意識して飾る大事さを繰り返し説いていた恵一さんですから。なあんて、偉そうに書いていると「君はだいたい大げさなんだ。考え過ぎだよ」と戒められそうです。

※佐々木一澄さんは、28日21時からBSジャパンで放映される「空から日本を見てみよう」に、鳴子温泉のこけし収集家として登場するそうです。楽しみ!

LEICA M-E , MACRO-ELMAR90mm f/4
SIGMA DP3 MERRILL 75mm f/2.8