2019年2月27日水曜日

San curry



10数年前、湘南を取材してまわっていたころ、いちばん心の安らぎを覚えたのは鵠沼松が岡という地域だった。ゆったりとした敷地の、別荘由来の家が並び、温かな陽光と穏やかな空気が満ちあふれ、サンルームでうたた寝するような、うっとりとした気分で町なかをさまよった。



どこか浮世離れした、この憧れの地域に待望のカレー店「San curry」がオープンした。横浜吉田町での骨董市ではじめて食べたとき感動し、実店舗の開業を楽しみにしていた。少し時間が経ち、出遅れてしまったが、春の陽気で光輝く日曜にランチを食べに行った。



一方通行の狭い道が縦横、斜めに走り、土地勘の無い者が車でピンポイントの場所へスムーズにアクセスするのは難しいかもしれない。ちょっと離れた片瀬のコインパーキングに停めて、歩いて向かった。鵠沼駅からすぐだから、本当は江ノ電利用がベストだろう。



友達の家に招かれ、くつろぐような空間感。リラックスしつつ、料理への期待で胸が高まっていく。



身体の滋養を気遣う食材で構成されるベジプレートと、豚肉の組み合わせで、この日は南インドスタイルのミール。スパイスのめくるめく効果が多幸感とセットで押し寄せて来て、吹き出す汗を拭いながら何度も「おいしい!」と感嘆の声が漏れ出た。



僕の人生史上で最高のカレーだと感じ入り、チャイになごんだ。あの土地、あの光、あの空間、あの味。ほかの場では得難い、特別な食体験にただ心酔した。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH. f1.4