平日は毎日、かつての花街、旧木挽町を通って仕事場に向かう。柳が風に揺らぎ、朝の柔らかな光で影を瀟洒な建物に落とす風情に和みながら。
柳の下には紫陽花。梅雨はこの街を一年でもっとも華やかに彩る。幼馴染の実家が営んでいた奥村書店など歌舞伎がらみの商家が多いのも、この街が好きな理由。奥村さんは店を閉じたが、柏屋菓子店は高齢な親父さんが素朴な和菓子を作り続けている。
昼休みには、ときどきその菓子を買い、柳の下でコーヒーと一緒に味わう。なかなかオツな木挽町時間を愛でられている気がする。
梅雨はウエットな時季だが、じつは風も強いことを柳は教えてくれる。ユラユラとさまざまな方角から吹く風に合わせて自在にたなびく葉を見つめ、自分もこんな風にしなやかに過ごしていきたいと思う。
LEICA M-E , MACRO ELMAR 90mm f4