2016年3月27日日曜日

紺碧の大洋のようなカバー



きわめて美しい装丁に加えて、見開きごとに入る島地図のクオリティ、ウイットに富む洒脱な文章に感銘を受けるに出合いました。そのような特別な一冊は得てしてそうなのですが、書籍の一般的な判型に収まらない変型サイズ。所有するブックカバーのどれでも包むことができません。そこで、使い古した物撮り用の白いケント紙を活用して専用カバーを仕立てることにしました。画家バルテュスが使っていたというローマの画材店「Poggi」の泥絵の具が家にあったので、水に溶かし、奈良の筆でラフに塗りました。





乾くと、紺碧の大洋のような深いブルーとなります。深海に吸いこまれそうな色に魅せられ、手に取ってみると、指にべったりと塗料が付着。紙との相性、泥絵の具の特性もあって、色が定着しません。手だけでなく本にも色移りしてしまい、これでは使い物にならない。




そこでさらに陽に当てて放置したり、藁ほうきで表面を撫で、過剰な塗料を掃いたりしたのですが、依然と色移りしてしまいます。




水彩絵の具で絵を描いている人には常識なのかもしれませんが、知識も経験もないぼくはただ頭を抱えます。軽い気持ちで着手したのに、大げさなことになってしまいました。なんとか色を定着させ、ブックカバーとして使いたいと諦めきれず、銀座・伊東屋別館の画材コーナーへ。目的を伝えて知識豊富なスタッフの方に「ホルベイン トリパブA」というスプレーを勧めてもらいました。




家に帰って早速、表面に吹きかけると、見事に色が定着。深い満足感に浸りながらも、はたして1,300円ほども使って実現することだったのかと冷静に自身の行動を振り返ります。お酒でも呑み、じっくりこの本を味わい、紺碧の海に浮かぶ孤島をめぐる妄想の旅に出たいと思います。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH.