2017年6月17日土曜日

翁の散歩


50歳を過ぎても体力・気力を過信して、自分はまだまだと思いたくなる。けれど、確実に老いは進行していて、当たり前と考えていたことができなくなる。慢心は足元をすくう。今朝も、仕事に向かう途中、足を天に上げるほど見事に転び茫然自失。気を引き締め、もろもろじっくり、ていねいに臨まなくてはいけないと自戒。


とはいえ、老いにより、張っていた気を緩め、身体をいたわることも佳いなとも思う。翁の境地で、忌むものをひたすら避ける狭い心に余地をつくる。すると、心情が鎮まり、日々穏やかに過ごせる気がする。


白黒はっきりさせない。奥行きと幅のある陰影をとらえるライカレンズは、翁的思考を補助してくれる。日没後、迫る闇の領域を子細に描く。じっとその陰に目を凝らしていると、心の内面へと静かに下りていく。その視覚体験が快楽的。


光と影。それは対になっているけれど、その境界は曖昧。その曖昧さが大事なんだ。


余地をたくさんつくること、曖昧さに重きをおくこと。ライカレンズは老いつつある自分にたいせつなことを教示してくれる。こんな光学製品はたぶんほかにはない。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH. f/1.4