2017年6月20日火曜日

チベットを学ぶ


旅する骨董商Kihachiさんと構想を練りはじめた、チベットの物と旅の本。物について語るならば牧畜民の伝統的な暮らしと、物にこめた宗教的背景を知りたくなる。そこで、新宿・曙橋のチベタン・レストラン「タシデレ」で催された上映&トークイベント「ヤクとミルクをめぐる冒険」に参加。チベットの言語や文化の研究をしている、東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 の星 泉助教授の解説のもと、チベットの若手監督カシャムジャさんと一緒に、チベット牧畜民の暮らしを撮影・記録した映像を鑑賞。丹念なフィールド調査をベースに、チベットの文化人類学を研究する駒澤大学准教授、別所裕介 さんからはチベットの宗教信仰と自然観についてお話を伺う。


ヤクのミルクでバター、ヨーグルトをつくる牧畜民の暮らし。しなやかな肢体をもち、綾瀬はるかに似た美人姉妹が湧き水を満たせば30数kgの重さになるポリタンクをかついで急斜面を歩き、一日何度も水を補給する。すべては祈りが根源にあり、生きるものすべてへの配慮を忘れず、土着の神様に捧げる行為が自然体で生活に組みこまれている。そんな一日を追った映像がすごい。一介の編集者、ライター、写真家では追究しえない領域に深く分け入り、生活、文化、宗教の実際を興味深く教えてくれた。圧巻の内容をさらりと開示する二人に感服し、この日は挨拶もせずに、店を後にした。自分のような考えの浅い、軽薄な男が軽率に交流を試みてよいのか。自分のつくりたいと考える本との接点があるのだろうか。今後も彼らの発表の場にできるだけ赴き、どうすべきかじっくり考えていこう。

会場となった「タシデレ」もただならぬ存在感があった。店に入ってすぐに、ここは佳い店だ、おいしいものが食べられると直観を走らせる気配がある。今度はここでツァンパ料理を食べ、知性が顔や佇まいに表出するチベット人オーナーに取材も申し込んでみよう。

LEICA  M-E , SUMMILUX50mm ASPH.