2017年9月28日木曜日

スタルクの思い出


浅草側の隅田公園から対岸のスーパードライホールを眺めていて、依然と外国人観光客から熱い視線を集める黄金色の造形力に感心。フィリップ・スタルクのデザイン。フランス語で「金の炎」を意味するオブジェ『フラムドール』と聖火台をイメージした建物。エクステリアのほか、インテリアもスタルクが手がけたという。スタルクの公式HPにはあえて内部レストランの階段部分の写真しか載せていないのが心憎い。


このビルが建てられた1989年当時、スタルクは時代の寵児としてもてはやされ、僕が90年代にとても影響を受けた雑誌『Casa Brutus』の初号は1998年12月に刊行され、メイン特集としてスタルクの選択眼にフォーカスしていた。スタルクが渋谷の東急ハンズで何を選び、何を選ばなかったという興味深い記事。ソニーのモバイルスピーカーやペリカンのオレンジ色の完全防水ケースなど、選んだ物の多くを僕が所有していたこともあり、彼に親近感を覚えた。それで、ちょっと「とっぽい」形だなと感じつつもスタルクが考案した椅子や、セブンイレブンで販売していたスタルク・デザインの文具や生活用品を買い揃えた。そんな約20年前の熱情がフラムドールを見上げていると蘇り、胸が熱くなる。スタルクの斬新な発想・創造・企画は今も古びていない。それがスゴイ。スタルク詣でという私的な意識をまじえて、この建築をこんどアサヒビールに取材させてもらおう。

SIGMA DP3MERRILL  75mm f/2.8