2017年11月9日木曜日

横浜ブルーラインのM.YANAGI


民藝という柳宗悦さんただひとりの美意識、物の見方に関心をもつ初端は、僕の場合、宗悦さんの息子、柳宗理(むねみち)さんの工業デザインにあった。90年代に復刻された柳デザインの工業製品を夢中になって買い揃え、その過程で美しい工藝品を紹介する人や店と出合えた。2001年2月に発刊された「CASA BRUTUS 11号」の『柳宗理に会いませんか?』特集は現「BRUTUS」編集長の西田善太さんがひとりで企画・制作した入魂の号だという。この号はほとんどの雑誌を手放してしまった今でも本棚に保存してあるほど、強いインパクトを受けた。とりわけ印象に残っているのは、横浜市営地下鉄ブルーラインの各駅の設備を宗理さんがデザインしたというレポートだった。


そのレポートが掲載されて16年が経過したけれど、一般の人には誰がデザインしたかなんて気にも留められず、使われ続けている。水飲み場の蛇口には手が不自由な人でも動かしやすいユニバーサルデザインのレバーが付いている。このレバーの造形と機能に惹かれ、家の洗面台も同じタイプを使っている。自宅の設計当初は宗理デザインのステンレスボウルを手洗いの水受けにしようと考えたくらい、90年代から2000年代初頭は宗理さんのデザイン思想に傾倒していた。その熱情が懐かしい。


無匿名性のアノニマスデザインを提唱しながら、宗理さんのデザインには明確な個性が痕跡となって残され、眼に訴えかけてくる。その強さがなんだかんだいっても普遍的。宗理デザインが散りばめられた駅を毎日、利用できる人が羨ましい。


宗理デザインの黄色に惹かれて駅を出ると、目の前を珍しい黄色いトラックが3台通過していった。僕はこのように景色の連続が発現するとき、なにかの啓示だと受け取める。今の自分にはラッキーカラーなのかな。意識しておこう。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH. f/1.4