2019年2月11日月曜日

JOHN LEACH



鎌倉「もやい工藝」の故・久野恵一さんのもとに、手仕事の良品についてのお話を聞き取りに通っていたとき日用品に話が及び、恵一さんが居間から持ってきたのはジョン・リーチ窯マチェルニー・ポタリー)のマグカップでした。
「毎朝、ミルクを入れて飲んでいるんだ」と、修繕の跡があるマグカップを大事そうに持ちながら話されていました。これは恵一さんの長男で、「もやい工藝」現・店主の民樹さんが1981年に誕生した際、日本民藝館の学芸主任だった故・佐々木潤一さんからお祝いにと贈られた物で、今は自分が使っているとか。


なぜ佐々木さんが異国の陶器を選ばれたのか、そして恵一さんが思い入れる理由を詳しく尋ねなかったことを悔やんでいますが、1982年に日本民藝館の正式な職員となり、現・学芸部長の杉山享司さんはこう推察してくれました。
「当時、柳宗理館長の補佐役として民藝館の国際関係を担当していた故・内海禎子さん(後に日本民藝館常務理事)はジョン・リーチの父であるデイビッド・リーチとのやり取りをされてましたし、その後イギリスで民藝展も開催されるなど、イギリスとの交流があったことを記憶しております。ジョン・リーチをはじめ、その父や祖父(バーナード・リーチ)が作るピッチャーやマグカップなど取っ手のついた焼物は、使い易さや美しさの観点から大変優れております。きっと、新作の参考になると考えて、久野さんは愛用していたのではないでしょうか」


先日、この優品との縁に結ばれました。手仕事フォーラム・メンバーの高梨武晃さんが三浦市で営む「讃々舎」にちょっと古いジョン・リーチ窯のマグカップが入荷したというのです。希少ゆえ、ふだん使いするには躊躇する値段でしたが、大好物のコーヒーを毎日、このカップで味わえたらと憧れの想いが募り、よく考えて購入しました。不意に割れてしまうこともあるかもしれませんが、恵一さんと同じく直して使い続けたいですし、割れた箇所を漆で継ぐ手法も身につけていくつもりです。


さて、念願のマグカップを初めて手に持ったとき、容量がたっぷりで、どっしりとした安定感ある造形に反して軽やかな点に驚きました。この軽さは陶工の技術の高さを裏付けるものでしょうし、嗜好の一杯を愛でる時間に心地よさをもたらすはずです。ちなみに僕が入手したマグカップは1977年製。エリザベス2世の1952年以来の在位25年(シルバージュビリー)を記念したスタンプが施されていました。民窯が特別仕様を手がける体制に独得の文化を感じさせます。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH.