2019年5月4日土曜日

korea



韓国とは不思議な縁があって、ここ数年で何度も取材する機会に恵まれた。とくにソウルは隅々まで歩いて地図を制作しただけに思い入れは深い。情熱的な人、滋養ある食、風水をもとに形成された都市、そして眼の澄んだ李朝の骨董商。再訪の日を待ち望みながら、菱田雄介写真集「border | korea」(リブロアルテ)を毎日眺めている。韓国と北朝鮮の人、風景を対比させて見せる一冊。ページを開くごとに、あまりの差異に眼が奪われる。それにしても、北朝鮮の人たちの穏やかな表情が佳い。資本主義の韓国より、全体社会主義の国民の方がはるかに魅力的な顔をしているのは、どういうことなのだろうと考えさせられる。



白磁の鳥も見比べてみた。左は李朝の副葬品、右はソウルの女性が創作した物。丸みを帯び、やわらかな造形の李朝白磁の方に僕は魅せられる。



朝鮮の陶工はかつて九州に連れて行かれて、日本に焼き物の技術を伝えた。僕はそのつながりを小鹿田焼、柳瀬朝夫さんのおばあちゃん作と聞いている鳥の箸置きから強く感じる。このなんとも力の抜けたかたち、狙ってもなかなか真似できないだろう。李朝物以上の緩さ具合ではないだろうか。毎日の食卓で使いつつ、手に入れておいて心底よかったと思っている。

LEICA M-E , MACRO ELMAR 90mm f4