2019年6月14日金曜日

tommy



錦糸町は80年代の僕にとって買物天国だった。アシックス(旧オニツカ)の東京支社があり、おひざ元のスポーツ用品店にはアシックスの最新ウエアを販売。なかでも、レース中に便意をもよおし、草むらで用を足したあとコースに戻って優勝した伝説のマラソンランナー、フランク・ショーターをブランドに冠したランニングウエアに魅せられ、中学陸上部の練習で得意気に着ていた。品揃えがイカす古書店も用品店そばにあり、定期的に自転車で街をクルージングしていた。



先日、錦糸町駅前で商談をしたついでに、かねてから行きたかった「トミー」で昼ごはんをとった。お目当ては名物のホットケーキ。戸が開け放たれた室内には凛とした気配が適度にあって、心地よかった。女性店員のよどみない動き、地域客の風情、室内外の細部はパンケーキが自慢のマンハッタンのダイナー「good enough to eat」を想起させ、鉄板を預かる高齢な店主の美意識をさりげなく感じ取れた。



梅雨の曇天、午後1時過ぎ。裏通りを行き交うビジネスマンを眺め、チーズとコーン入りのホットケーキをいただく、のどかなひとときを愉しんだ。ふんわりとした焼き加減が絶妙だ。長さ短めなナイフとフォークの機能性もこのケーキを切り分け、口に運ぶ動作に素晴らしくマッチしている。こういうさらりとした洗練に僕は心酔して、深く充たされる。

SIGMA DP3 MERRILL75mm f2.8