なんでもかたちから享楽の深い世界の中心へと迅速に踏み入っていく自分は、野鳥観察へのにわかな関心が興ると、真っ先に優れた双眼鏡を欲した。双眼鏡の天上にはドイツのカールツァイスという光学ブランドが威光を放っている。何が佳いのか調べると、和歌山在住のBLRM(ブラッキー・リッチ―モア)さんが推す、伝説の名機「カール ツァイス イエナ デルトリンテム」との神がかり的な縁につながった。
自然な見え味を称賛するBLRMさんがレンズのクリーニング、光軸とフォーカスノブの調整など徹底整備。発送直前まで確認を怠らない姿勢に感服した。ドイツ、イエナ工場で1960年代まで製造された黄金期から少し後の1977年製。実用機としてリーズナブルに分けていただいたヴィンテージは42年前のものとは思えぬ最高の状態。好きな物を生かす深い情愛が伝わり、泣きそうになるほど感動した。これからも面倒を診てくれるというBLRMさんとは長いお付き合いになりそうだ。
付属の黒革ケースも頑丈で素晴らしかったが、頻繁に出し入れするにはファスナーがやや硬く感じたので、軽快な容れものを買い足した。FOUND MUJIで見つけたインドの刺し子ポーチ。あつらえたようにぴったり収まったときには必然の連鎖に鳥肌が立った。まぎれもなく運命だと、余計な買い物の言い訳としたい。
SIGMA DP3 MERRILL 75mm / f2.8