ほぼ毎夏、グリーン車で約3時間。ほどよく遠い群馬へ出かけて、蒸気機関車に乗りに行く。今回はお盆初日。台風が到来する前、スタートダッシュの夏休み。
絵になる運転室。高崎駅のホームでそこそこの賑わいのなか、乗務員の勇姿に見惚れる平穏な時間が佳い。SLは運転が厳しいが、やりがいがあるという。ボイラの焚火の巧拙により出力は大きく変わり、加減弁などの扱いで牽引力はかなり増減するそう。スムーズな運転には高い技量が求められるのだ。
乗車したのは旅客列車用機関車C6120。1949年、広島県三原市で三菱重工業が製作したもの。蒸気を調整するバルブや計器が並び壮観。眼鏡をかけた男性が機関士。目前に気室圧力計と速度計、ブレーキ弁、足元には汽笛を鳴らすペダルが配置される。
ホーム上のJR駅員もにこやかに場を盛り上げる。このなごやかな活気に触れたくて通いたくなる。人混みを嫌う自分には例外的に好ましく感じる熱中の場。大人も童心に還る。
途中、渋川駅でしばらく停車。ホームで上越線ビール2種『D51498 BLACK』、『C6120 PILSNER』を買う。群馬県産の麦芽とみなかみ町の水を使用したクラフトビール。こってりとしたコクがあり、とても旨い。瓶で飲むとなおさら。
保育社のカラーブックスで知識を得ながら濃緑の車窓を愛でる。牽引されるのはクーラーを備えた12系客車。汗をかく旧型客車と比してすこぶる快適。
情趣は旧型が勝るけれど。傾斜地帯にさしかかると、黒煙が増し、汽笛が鳴り、心眼が揺さぶられる。のどけさと興奮が同居する小さな旅。また、感銘を重ねた。
つづく
LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH. / f1.4