2019年9月7日土曜日

ROAD SIDE



沼田駅前のがらーんとひと気のないロータリーで、泊まる湯宿温泉行きのバス停で次の便を確認。1時間に1本しか運行していないから、待ち時間はたっぷり。近くの蕎麦屋に入り、十割蕎麦を食べ、しばし和む。



蕎麦屋のカレーも味わっていると、妻が仕事場の人から聞いた沼田名物のりんご狩りに行ってみたいと言う。iPhoneで調べると、バスで20分ほどでりんご街道のエリアに行けるとわかり、乗るべき便を確認。旅は思いつきがいい。



東京では電車、沼田では自家用車が日常の足だから、どちらもバスは廃れた。寂れつつも学生や高齢者などゆったりと非日常を移ろう人のためにかろうじて動いている。ガラガラのベンチシート群、車窓の山並みと緑を眺め、悠然たる移動を愛でる。心がローカルな時間軸に同調していく。



Google MAPで現在位置を見ながら降りるタイミングをはかり、りんご園そばのバス停で下車。



しかし、どこも閉まっている(笑)。駅に戻るバスはまた1時間後。さて、どう過ごそうかと呆然。これだから思いつき旅は楽しい。



群馬ナンバーの車がたくさん停まるドライブイン。きっと人気店なのだろう。関越自動車道のインターに近いから次はLEAFでアクセスしてみようか。駅前レンタカーを使うのも良いかも。



と思い浮かべつつ、県道端のユニークな景色を観るには非効率なバスと歩行が適していると、眼が感応するままにスナップを始める。



インパクトある看板。前回の旅で口にできなかった名物の焼きまんじゅうをいただこうと入る。僕はこの菓子が大好物なのだ。学生時代にいちばん仲が良かった友だちの母が沼田出身で、遊びに行くとふるまってくれた温かな焼きまんじゅうの、ふっくらとした皮、味噌だれの濃厚な味わいが舌の記憶に残っている。



優しそうなおばちゃんがひとりフラッグシップストアを預かる工場直売の空間。焼きたてを食べることもできる。添加物は未使用。観光客ではなく、買ってすぐ食べる地元の人を相手にしている佳き店に出合えた。満腹だからとはじめは引き気味の妻も、ペロリといける軽やかなおいしさに驚いていた。おばちゃんの「これはパンと同じだから」という呟きが心に留まる。



店内の壁紙、合板に無造作に留められたりんごの絵がなんとも味がある。孫の作品だろうか。「りんごはまだ早いよ」とおばちゃん。深まる秋の頃合いにまた、再訪しよう。



誰もいないりんご園の軒先で残暑の陽を避け、駅に帰るバスを待つ。
つづく

LEICA M-E , ELMARIT28mm 4th GENERATION /f2.8
SUMMILUX 50mm ASPH. / f1.4