鎌倉が多くの観光客で賑わう快晴の週末。その喧噪に混じる気力はなく、及び腰で中心地に向かうとき、進入ルートは限られてきます。たとえば大町の路地を抜け、農連市場裏口へと向かう。午後遅くの場内はほとんどの野菜が売れ、閑散としている。その平穏な雰囲気の空間を歩くと、いつも心が安らぎます。若宮大路に出れば、明るい斜光に照らし出されるパタゴニア鎌倉ストア前のデッキでなごむ人の姿が目に入る。観光名所なのに、混雑から少し距離を置いたこのあたりには、平日、週末を問わず穏やかな光と空気に包まれているように思います。その心地よさは、皮膚感覚ではハワイの町で感じるものに通じるように感じるのですが、同意見な人も少なくないのでは?
パタゴニアで買い物を済ませたら、すみやかに大町界隈へエスケイプ。いつもなら、そのまま逗子方面に向かうのですが、市場の端にデリカッセン「LONG TRACK FOODS DAILY」がオープンしてからは、夕食あるいは晩酌の友を求める愉しみが加わりました。スタイリストの岡尾美代子さん、フードコーディネイターの馬詰佳香さん、料理家の糸山香奈さんが営む店の2号店。簡潔な洗練さを帯びた商品パッケージを持ち帰ると、高揚感が食事や安息のひとときにもたらされる。妻はパッケージの文字の大きさが好き、と讃えますが、なるほどと頷きます。
観光客が帰り始め、ふだんの静けさを取り戻しつつある、夕暮れの鎌倉には劇的な情景がそこかしこに浮かび上がる。夕陽が生み出す陰影の優美さには、しばらくその場から動けなくなるほどの感銘を受けます。葉山までその感動に浸ったまま、ゆっくりと走って帰るのは、充足感のある休日の締めくくりかたです。
LEICA M-E SUMMILUX50mm