子どものころ、実家の佃島には木造家屋の傷んだ杉板の外壁をトタンで覆い修繕する家を多く見かけた。みすぼらしい姿だなぁと嫌っていた。しかし、大人になり価値観が変わった今は、トタンの家に深い味わいを感じる。錆びの風情、朽ちていく美。現代アート作品みたいで惹かれる。昼休みに歩く東銀座界隈には、そんな重要文化物件がポツポツと残存している。けれど油断はできない。数日後に解体され、 跡形もなくなっていることもしばしばだから。ぼくには、はかない存在をただ見つめることしかできない。
LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH.