2018年5月5日土曜日

草にふれる


潮騒がこだまするパシフィック・コースト・トレイル。葉山から峯山を歩いて矢谷左知子さんのワークショップに向かう。


清涼感に満ちた風に包まれる海沿いの道。なんて心地いいんだと酔いしれる。


シーカヤッキングに夢中になっていたころ、昼寝しながらワインを呑んでいた無人島、尾ケ島が正面に見える丘。この楽園の視界ももうすぐ新築の家で遮られるという。別荘の宅地開発が峯山で急ピッチで進められている。なぜ大切な余地を残しておけないのだろう。


この日は月桃の茎などを用いての草ひもづくり。不器用な自分にはたしてできるのか、不安な気持ちを「つくることが目的ではなくて、草にふれることが大事」という矢谷さんの一言がやわらげてくれた。




4本または2本の草を撚り、1本のひもにしていく。ゆっくり、じっくり繰り返して習得していく。この基本原理を手が覚えたから今後は、庭のあらゆる草で僕はひもをつくれるようになったのが嬉しくてたまらない。ひたすら無心でひとつのことに向き合う時間。気持ちが穏やかに、のびやかに開放されていく。


お昼にいただいた草弁当。庭の草を味わい、体が悦び、活力が湧き出る。


月桃の葉ひたる芳香なお茶とともに、よもぎをまじえたスコーンを。なんておいしさ!


午前中に練習でつくった葉のひもとともに、月桃のひもを並べる。人それぞれの佇まいを見渡し、達成感に浸る。草にふれあい、慈しみ、感謝する行為を介して、草と交歓できた実感があった。身のまわりに茂る草のかけがいのなさ、内に秘める強さも感じられた。


月桃のひもで編んだかご。次はこれをつくりたいなぁ。帰る途中のトレイル、家のまわり、こみちの植物を見る眼が自分のなかで明らかに変わった。この草、あの草でひもをつくってみたいと、自然と願いが湧きあがってくる。矢谷さんに深謝。

iPhone X , 24mm , adobe Lightroom cc HDR CAMERA
LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH.