2015年6月23日火曜日

アラヤチー



沖縄の素焼きアラヤチー。この雑器づくりの名手といえば新垣栄用さん。アラヤチーで寝かした泡盛を広めたのは那覇の居酒屋「うりずん」。まろやかに熟成した古酒のおいしさ。家でも再現したくて、栄用さんの小さな甕(カメ)を求めたのはずいぶん前のこと。釉薬を掛けない荒焼き(素焼き)。多孔性粘土の素材は呼吸をするため、少しずつ中の液体が外へ染み出て、表面で蒸発。その気化熱作用で甕と内部が冷やされることで、水や酒を腐りにくくします。優れた働きと素朴な風合いに、南国の風土と暮らしを思い浮かべ、道具の「用」に惹かれます。ふと、梅雨の湿度を払おうと、甕に首里「瑞穂」の古酒を満たす。「口に含むと甘いバニラ香の後から熟したナッツの香りが漂う」という文句にくすぐられる43度の古酒。強烈な香りと酔いに、亜熱帯の島へと心が旅立ちます。

LEICA M-E SUMMILUX50mm