2015年6月4日木曜日

築地のブックストア


限られた売り場面積ながら、品揃えと陳列のセンスに驚嘆している築地、内外書店。朝6時から当たり前のように店を開ける働きぶりにも心打たれます。さらに、整然と美しく並ぶ平積みから必ずといっていいほど欲しい一冊が見出せるたびに感銘を受けるのです。佃島で生まれ育ち、築地は馴染み深いエリア。子供のころから内外書店前を行き交っていました。けれど、いつも難しそうな本を睨み、レジ前で微動だにしないご主人の風貌と視線に気おくれ。小僧は気安く立ち入ってはいけない大人の聖域に思えました。


40歳半ばから、近くの仕事場に通うようになってからは、すんなり利用できるようになりましたが、ご主人の姿が目に入ると、いまだに萎縮してしまいます。クール&モダンな店舗兼住居の建築、早朝の品出し、絶妙な本のセレクトと出版社への特注、陳列の美意識など聞きこみたいのですが、切り出すことはできません。柔和ながら厳格な表情は不変。しかし、先日は勇気を絞り出して話しかけ、店内を撮影してもいいか打診。「はぁ!?」と戸惑いの声を出し、眉をひそめて険しい顔に。「あー、だめかな」と言動に後悔しかけたところで、ご主人は首を縦に振ってくれたのでした。これからも背筋を伸ばして店に入ることになりそうですが、この尊い書店が長く商いを続けられることを願うばかりです。

SIGMA DP3 MERRILL、LEICA M-E ELMARIT28mm

追伸:デザイン系本の充実など広告代理店が多い地域性や時流を心得た品揃えに感服。この日も発売直後の「パンの雑誌」が高く積まれていました。ぱっと見は、老夫婦が営む、昔ながらの「普通の書店」ですが、通好みの稀有なストアなのです。