2015年12月11日金曜日

エンゾの岩


どんよりと厚い雲が垂れこめる曇天の日。湘南で生まれ育ったアーティストの言葉が心に浮かびます。「冬の海と空のブルーグレイな色が好き。ヨーロッパみたいだから」。その感じように共感したとき、ぼくも湘南の冬の情景に惹かれているのだなと気づかされました。ブルーグレーの景色を前にすると、まだ見ぬイタリアの海岸へと意識が飛んでいきます。週末、犬と散歩する葉山一色海岸。海を向いて右端に太古の地層が露呈した岩場が広がります。色彩と造形は原始的で、遥か彼方の遠い国を想わせる。その景色が1999年8月10日に発売された「Sports Graphic Number 477」内のイメージにつながるのです。


イタリアを愉しむ」という特集号。その紙面に載ったビジュアルが目に焼き付いています。フリーダイビングの世界から身を引き、当時は州議員をしていたエンツォ・マイオルカ。映画「グラン・ブルー」で実際とは真逆のキャラクターに歪曲されたエンゾ。そのモデルとなった彼がインタビューを受け、映画に憤慨し、真実を語る記事でした。上質な仕立てのスーツを着こなす伊達男が岩場に横たわる写真がテキストの背景にレイアウト。その岩場が一色海岸のものに酷似していたのです。葉山の岩場は素潜りやスキューバダイビングのポイントに面しているし、温暖な気候という共通点も。だからでしょうか、いつもの岩場に佇むと、いつだって地中海の海辺へと妄想トリップできる気がします。

追記:映画「This is Bossa Nova」冒頭にホベルト・メネスカルとカルロス・リラが語り合うシーンがあります。彼らが座る場所はリオ・デ・ジャネイロ、イパネマビーチを望む岩場。この岩場もまた一色海岸のものに似ている。リオはビーチに常緑の山が迫っているから、葉山とうりふたつ。快楽主義者が多く住む点も。

Leica Elmarit-M 28mm f/2.8 (IV)