2016年3月20日日曜日

鎌倉の安息



鎌倉駅にわりと近い立地なのに、山を背後に抱え、海からの風が心地よく通り抜ける、自然豊かなこの古都の風情を存分に味わえる妙本寺。団体ツアーはもちろん、高齢者の個人旅行でもノーマークな場所なのか、地域とゆるやかになつがる境内はいつも喧噪とは無縁なのがいい。その静けさに身を置くたびに心が穏やかになるのをはっきり感じます。いちばん好きな鎌倉の寺社だから、鎌倉中心部でのアポイントメントがあり、少し早く着いてしまったときは、この寺の最奥に立つ祖師堂でひとやすみさせてもらいます。





長い年月、風雨にさらされたものたちの佇まいが美しい。華美さはなく、素朴な味わい。なるべく手を加えず、自然のままを残すように気を配られているそうです。ご住職の美意識と深慮、見識をそのまま美し(写し)出しているように思えます。この空間で心やすめる地元の人も多く、鎌倉小町のパタゴニア・スタッフも昼休みはよくここで休憩していると聞いたことがあります。



北条一族の策略で壊滅された一族がもともとは暮らしていた谷。悲哀の歴史が背後には流れているのですが、いつもあたりは温かな空気で満たされています。




神社仏閣めぐりには、個人的にはまったく関心のない自分ですが、この聖域には宗教を超えた慈愛に包まれる気がして、信仰のたいせつさをおぼろげながら想ったりもします。






苔むし、シダが群茂するアプローチ。参道を登り歩いて清浄な空気を吸い、植物の生気に包まれる。こんな素晴らしい場所がひっそりとある。鎌倉の懐の深さにいつも魅了されます。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH.