2016年7月25日月曜日

葉山のハチミツ


葉山の無農薬農園「パラダイスフィールド」でセイヨウミツバチのハチミツ採取を見学したり、体験するイベントがおこなわれると聞き、様子を見せていただきました。


パラダイスフィールドで養蜂をするのは葉山・上山口在住の上運天さん。以前は自宅で養蜂を楽しまれていましたが、現在はこの農園で、セイヨウミツバチとニホンミツバチを育て、ミツを採取。ノウハウを持つ地域住民との協力関係を築きながら、パラダイスフィールドはローカルな農園として進化しいるのです。


ひとつの巣箱には最高10枚巣板がミツバチ活動しやすい間隔を空け入る。この巣板にはハチが巣房をつくりやすいよう六角形の土台を刻んだ「巣礎」が付けられています。

巣箱から巣板を取り出すときに働きバチは怒りなかにはアタックしてくる個体もいます。網の付いた「面布」で顔を守り、両手は手袋でガード。まずは麻を燃やした燻煙器で巣箱に煙を吹きかけ、働きバチをおとなしくさせてから作業。4m以内巣箱へと近づくと羽音がうなるような怒音に変質していく。思わず腰が引く迫力です。


ミツバチの種類は3種。ひたすら卵を産み続ける女王蜂、その子供で交尾だけを仕事にするオスバチ、そして、やはり女王蜂の子供で全員メスの働きバチ。巣板の中央部の巣房には女王蜂が卵が産みつけ、働きバチにより幼虫が育てられ、周囲の巣房には餌となるミツや花粉が貯蔵されています。働きバチは巣づくり、巣のそうじ、ミツ集め、巣房へのミツ詰め、幼虫の世話など働きづめで春から夏の活発期は1カ月ばかりの短命をまっとう。オスは生殖のためだけに生き、不要となれば排除されてしまう。「なんだか、今の人間社会を見ているようで、せつなくなるよ」とは以前、取材した男性の養蜂家がため息まじりに漏らした言葉です。
 


蜂ブラシで巣板のハチを払い落とし、ミツの貯蔵状況を視認します。巣板によって子育ての巣房が多い(これは茶色のフタがかぶさる)ものと、ミツが貯まる巣房の多いものとがあるとのこと。


巣板の縁の方で白く見えるのがミツの詰まった巣房。働きバチは巣箱からだいたい2km圏内の花からミツを集めてくると、口移してミツ詰め係の働きバチに蜜をバトンタッチ。巣房に詰めたミツは別の働きバチが羽であおいでミツの水分を蒸発させ濃縮・熟成。ハチミチが出来上がっていきます。ハチミツが巣房いっぱいに貯まるとフタが閉められる。働きバチの間で経験に応じて役割分担されている。成熟した社会が形成されているんですねぇ。


パラダイスフィールドでミツが採れるのは年に2回のみ。次はまた来年。手間を惜しまず面倒をみて、採れるミツの量はとても限られています。前日、両手を働きバチに刺されてドラエモンの手みたいに腫れていながら「全然、大丈夫。蚊に刺されたようなもんですよ」と軽やかに笑う上運天さんの仕事を見ていると、ハチミツが途方もなく貴重な畑の宝物だと感じます。


ミツを採取する遠心分離機へと投入する前、巣房のミツブタを包丁でこそぎ取っていきます。自身で体験してみると、この作業はとても骨が折れるものだと実感します。大変だから、一般に流通するハチミツのほとんどが、この工程を省略。フタができる前に採取しちゃう。商品化するうえで効率はいいけれど、ハチミツの熟成度が足り糖度が低い。それ糖度を高めるためにハチミツを煮てしまうのですが、加熱によりハチミツの香りやビタミンも飛んでしまう。これを避けるために、パラダイスフィールドでは丹念にハチミツを集め、非加熱のハチミツを分けてくれるのです。


非加熱の自然糖度が高いハチミツは甘さ、香りの違いが歴然。そのおいしさは子供たちが純粋に感受するようで、皿に落ちたハチミツを舐めようと伸ばす手が止まらない。その目の輝きが本物のハチミツのクオリティを物語っていました。

遠心分離機分離機をぐるぐる回して採ミツはいよいよ最終段階へ。



瓶詰めも体験します。率先して作業に加わるお母さんと子供たちが目立ちます。そして、みんなとても笑顔が素敵! 


瓶詰めしたハチミツをイントに参加したFARM CANNINGメンバーのひとり、遠藤さんに持ってもらいました。FARM CANNINGはパラダイスフィールドで農作業をして、野外の調理場で収穫した野菜を瓶詰めする活動をしているコミュニティ。


ランチのテーブルに並んだサラダもビーツなど畑で採れたてのもの。ハチミツはバゲットにつけていただきます。なんて贅沢な・・・!


女性が生き生きとしていること、子供たちが素直に野菜やハチミツのおいしさを感じ取って笑顔を浮かべていること。この2つが特に印象に残りました。楽しく、食育。かけがいのない機会を見せてくださった伊藤さんに深謝します。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm/f1.4 ASPH.

参考文献:「ミツバチの絵本」農文協