2016年7月30日土曜日

お菓子と民藝


ずっと気になっていた鎌倉・梶原のケーキ店「POMPON CAKES」。そして世界一の店と慕う鎌倉・佐助の工藝店「もやい工藝」がコラボレーション。もやい工藝が選び、提供する民藝の美しい器で、いつかは食べてみたいと願っていたケーキが供される。



そんな夢のようなイベントが7月30日〜8月1日に催されると聞いては、もう超特急で向かうしかありません。初日の開店直後に葉山から走って行きました。


 このイベントに強く惹かれたのは、手仕事・民藝の器を扱うオンラインショップmoyaisのスタッフ平野さんが書かれたblogを読んだから。鎌倉に暮らす平野さんが、もやい工藝とPOMPON CAKES両店が好きな理由を目にして、まだ足を運んでいない後者の店もきっと佳い店なのだろうと確信できました。ぼくは平野さんが発信するインスタグラムのファンなのですが、彼女が日々、家で使う器の美しさといったら! センスのよさにため息が出ます。そして先日の投稿。イベント告知の文章と絵にたちまち魅了されました。民藝の器が実に洒脱なタッチで描かれています。描いたのはPOMPON CAKES店主の立道さんだそうです。こんな素敵な絵を描ける方がつくるケーキを食べてみたいと焦がれる想いが、平野さんに背中を押されながら湧いてきたのでした。


日曜日の昼過ぎまでは、POMPON CAKES店頭にて平野さんが選んだ美しい器を買うことができます。


富山県南砺市「わたなべ木工所」の白木パン皿をコイントレーに活用されているのですが、素朴なケヤキの皿がまるでメープルのように滑らかな風合いに色づいている。こんなに美しく使いこまれているパン皿は初めて見ました。この物ひとつから、ていねいな生活シーンが想像できます。




店内には器だけでなく竹、樹皮のカゴ、ザルも使いながらディスプレイされています。



そして民藝の器も棚にさりげなく。店主の好きなものと混在する佇まい、配置に店主の美意識を感じます。見せる収納。その好例ではないかと。


山内武志さんの型絵染めに載る沖縄・北窯、松田共司さんの角甕には紫陽花が生けられ、脇レコードプレイヤーはビル・エヴァンスの流麗なピアノを奏でます。目と耳に心地いい空気感は店主のセンスによるもの。勉強になるなぁ。


そして。きたー! 念願のケーキ。レモンチーズパイをいただきます。ひとくち食べて驚きました。なんというか優しい甘さなのです。旬で安心なものだけを材料に使われているそうですが、オーガニックケーキにありがちな、あっさり感、物足りなさ感が皆無なのです。おいしいなぁ。ひとくちで虜になりました。たまたま器は小鹿田焼、黒木昌伸さんのものでした。伝統の飛び鉋文様の縁に、モダンな文様が描かれている。新しい小鹿田を予感させる黒木さんの感覚と仕事の、ぼくはビッグファンであります。この飴色のほか、白色ももやい工藝では扱いがあるそう。今度、買いに行かなくちゃ!



店で居合わせたmoyais現・店主の今野さんには中井窯の染分け皿に載って運ばれてきました。あまりにも絵になる組み合わせにジーンと感激したそうで、しばらくじっと見つめていました。おいしい菓子が民藝の美しい器とが、互いに響きあうように在る情景。それは心にいつまでも残る食体験となります。この機会を与えてくださったことに感謝します。POMPON CAKESのケーキはテイクアウトできるし、バースディケーキもオーダーできますので、今度は家に持ち帰って、日用品である民藝のお気に入りな器と組み合わせて愛でてみよう。

今日は嬉しい出会いがあって、今、幸せな余韻に浸っています。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm/f1.4 ASPH.