2016年8月23日火曜日

夏の暮色



お盆休みのさなか、深い藍色に染まりゆく日没どき、部屋の灯りをほのかな間接光のみにしてNHKザ・プレミアムの映像を愉しみました。もう何度観たか忘れた、京都文化を伝えるドキュメンタリー




登場する雅なものすべてに惹かれるわけではないけれど、町家や古い木造家屋、老舗旅館のしつらいなどの風情には強く惹かれます。民藝の視点からすると、工藝的には観るべきものがひとつもないと嘆いていた美の恩師も旅の途中、京都に立ち寄る夜に綴った言葉には心の高揚がにじみ出ていた。ほかにはない京都特有の空間感と情趣に触れ、ふわふわと陶然とした気持ちになって、外を見れば、隣家や裏山のシルエットが幻想的に浮かび上がります。葉山もいいところだなぁ。




都会地と違って陽が沈むと、家の周囲がたちまち漆黒の闇に支配される地域。その暗さを愛でたいから、居間でくつろぐときには手元だけほんのり照らし、室内の多くが闇で占められます。たとえばこんな小さな灯り。長崎県佐世保の竹細工職人、野田利治さんが美の恩師の依頼で制作したランプシェイドに使える竹カゴ。米のりで貼り付けた和紙越しにやわらかな光で部屋のごく一部を照らします。隅々まで明るく照らす蛍光灯やLED光をスタンダードな照明として馴染んでいる人には、ぼくの家のまわりと室内空間は暗すぎるでしょう。「怖い」と言った親戚もいました。その暗さに安らぎを覚える自分の感覚は理解されにくいかもしれないけれど、自身ではとても満足しています。

LEICA M-E , MACRO-ELMAR90mm/f4