2016年9月27日火曜日

聖ルカ病院

     LEICA M-E , MACRO ELMAR90mm / f4


愛読書のひとつ「東京旧市街を歩く」(エクスナレッジ)。狙いすましたように、美しい光の陰影と建築の造形をとらえた写真が素晴らしい。選ばれた建造物のいくつかは幼いころから親しんだものも。けれど、高橋マナミさんの写真からはアングルや光の状況により、見慣れた建造物に別の印象を抱きうることを教えられます。とくに心奪われるのが周辺に点在する看板建築の少し後、1932年(昭和7年)に建築された、中央区明石町、聖路加病院・旧館の写真。1965年1月、この棟でぼくが生を受けた背景が思い入れに作用しているかもしれないけれど、いくつもの直線の造形美にただ心酔。崇敬する建築家アントニン・レーモンドが設計したと思われるタワーやデコラティブな部分と、増改築部の直線が複雑に交錯。その鑑賞ポイントのベストアングルを見出した高橋さんの眼と心を賞賛したい。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm / f1.4 ASPH.

高橋さんはどこから撮影したのか探りながら、本から受けた感銘をリアルに体験したくなり現場へ。昼休みに広角、標準と望遠まで複数の焦点距離のレンズを携え、位置を探し、撮影の実際を検証したのでした。上は50mm標準レンズで撮影し、現像アプリでトリミングしたもの。高橋さんが同様に写真の構図を微調整したのかはわかりませんが、50〜75mmのレンズを用いたのは間違い無いようです。美しい作品を模写する。名画の贋作家よろしく、好奇心が深く満たされる充足の散歩写真を愉しみました。