2016年10月25日火曜日

葉山一色の別邸


海を望み、背後に常緑の山が迫る葉山一色。温暖な気候と風光明媚な景色は昔も今も(たぶん)ほぼ変わらない。大正末期から昭和初期には宮家、華族、政府要人の別邸が建てられました。1934年(昭和9年)には487棟の別荘があったそうです。来年はじめの葉山一色海岸アート展では、一色のよいところを紹介するにあたって、この別荘建築もフォーカスしていきたい。そんな想いで、期間限定で公開されていた加地邸へと向かいました。ぼくの家の裏にそびえる三ヶ岡山。その麓に続くこみちづたいに歩いて行きます。苔むす佐島石の石垣に山影の光がスポット的に射し、いつ歩いてもその情趣に魅せられます。



門の前にある巨大なアガベ(リュウゼツラン)。一色海岸にも同じ大きさのアガベが育っていますが、当時の富裕・権力層の嗜好が熱帯植物の選択と地植えに表れているのでしょうか。


大谷石をメインに構成されるエクステリア。まるで遺跡のなかに迷いこんだような幻想的な感覚に包まれます。フランク・ロイド・ライトのもとで東京帝国ホテルや自由学園明日館などの建設に携わった遠藤新さんの設計。この凹凸がロイド風。


風化して、いっそう荘厳さを深めているように感じました。


見学者のために、地域のコーヒー豆焙煎工房「THE FIVE★BEANS」のコーヒースタンドが特設。



前庭から。家の裏は山へと続く。海に面した土地ではなく、ひっそりと人目を避けるよう、山の麓に建てた知性とセンスに唸ります。


一色の住民で、地域の文化・普及活動に尽力する堀 祐一さん(手前)。加地邸の保護にも関わる。堀さんを通じて外観の撮影を許可していただきました。堀さんは手ぬぐい作家の菅原恵利子さんともに地域コミュニティ・ペーパー「湘南ビーチFMマガジン」の制作もされています。

石のベンチに腰掛け「ここからの眺めがいいんだよ」とTHE FIVE ★BEANSのめぐるさんに話す堀さん。



視界を占めるのは石肌と濃厚なグリーン。そして、オブジェのような水槽。古代文明の遺跡っぽい。建物の配置と植生は、一色の光と緑を熟慮したもので、そこに遠藤さんの、ひいてはフランク・ロイド・ライトの時間を超越した思想を強く感じました。

当日、ハッセルブラッドで神秘の空間をきりとった写真は、葉山一色海岸アート展に展示します。堀さん、菅原さん、ありがとうございました。

さて、あと1カ月ちょっとで、たくさんのいいシーンをどれほど撮影できるか。エンジンがかかってきました。こんどの週末も、一色の素晴らしい洋館にお邪魔させていただきます。

LEICA M-E , ELMARIT28mm / f2.8 4th Generation