2016年10月7日金曜日

古石場のワイン醸造所&バー


実家のある佃島から隅田川を渡れば、江東区古石場。運河が流れ、水の気配が濃密な空気、情趣を感じる名に子どものころからずっと惹かれてきた地域です。その町にワイン醸造所「深川ワイナリー」ができ、つくりたてのワインを味わえると知り、訪ねたくなりました。都内では3番目にオープンした都市型ワイナリーだとか。平日の夜は予約制となる併設のバー(テイスティングルーム)で、この町内に暮らす先輩編集者と待ち合わせ。


ふだんはワインの温度管理のため、ワイナリーはシャッターを閉めている。席につく前、特別になかを見せていただきました。ワインづくりの工程の一部で、地域住民からボランティアをつのって参加してもらうこともあるそうです。江東区ではワイン用のブドウ栽培は難しいので、ブドウは取り寄せているとのこと。


ワイナリー脇の引き戸をひらくと、ほどよく狭くモダンなバーが現れる。隣町の牡丹町や門前仲町と比して飲食店の数も少なく、ほぼ住宅地の一帯。そこでひそやかに営まれる空間。意外なシチュエーションにワクワク。快楽的なるものを予感させます。


カウンター越しにワイナリー内が見える演出が楽しい。


醸造するのはナイアガラ、コンコード、シャルドネ、メルロー、カベルネソーヴィニヨンの5種。イエローとオレンジの色使いに、ポップなイラストを配したラベルがかわいい。親しみを覚えます。


京都出身の醸造人・上野浩輔さんがこの日は応対してくださいました。熟練の職人だけど、人柄はとてもやわらか。おだやかに、にこやかに、ワイン通ではない僕らに接してくれる。もちろん、尋ねれば、ワインのことを詳しく、ていねいに教えてくれます。



まずは、長野のブドウでつくったナイアガラの濾過タイプ(写真)と無濾過タイプから。素朴でやさしいおいしさ。フルーティな香りがグラスのなかからくっきり立ちます。とても好みです。



系列店の清澄白河九吾郎 Wine Table」のシェフがつくる、ワインによく合うおつまみ「フィンガーフードプレゼンテーション」。12~13品という量もそうですが、なにより味のよさに驚きました。3時間ほど過ごして、グラスワインを4~5杯ほど呑みつつ、お腹も満たされるボリューム感。前日までに要予約。おすすめです。



コンコードの赤・無濾過。グラスがまとう雰囲気も含めて、ワインは好きなのですが、じつはあまり相性がよくないようで、たくさん呑むと具合が悪くなることがある自分の体質。ところが、この日は終始、心地よく、幸せな気持ちをキープできました。ワインの質がそれだけよいし、控えめのアルコール度数や味わいなどが自分には合っているということなのでしょう。今度は白・赤のボトルを買いに来よう。自分は無濾過タイプが好きみたい。



おつまみの後半には頬が思わずゆるみ、幸福感をさらに深める、おいしいお寿司が。シェフは和食の板前さんとして腕を磨いていたよう。



ワインを外で呑んで、こんなにほろ酔いのよい気分で店をあとにできるのは、はじめての体験かもしれない。快楽的に酔いしれたあとは、いつものように牡丹町のセブンイレブンでアイスクリームを買って、古石場親水公園で深夜までおしゃべり。小津橋近くの水辺に立つ「プランツカフェ」の灯りが水面に映り、いい感じ。夜はビストロとなるこのカフェ。深川ワイナリーのワインも扱うそうです。今度、目指してみよう。


零時を過ぎても水辺はこの照度。東京の夜は長く明るい。隅田川の遊歩道づたいに実家に帰る。



煌々と照らされる堤防沿いガーデン。佃の地域住民に開放されている。深夜でも治安の心配は皆無。日本人に生まれてよかったと、いつもながら思います。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm / f1.4 ASPH.