2016年12月26日月曜日

古書と白磁とラーメン


11~12月、毎週末の古書「ウサギノフクシュウ」通いにて出合った古書「ラーメン大好き!!」。棚に麺出汁ならぬ面出し(表紙を表に陳列すること)された本の佇まいに惹かれ、手を伸ばした一冊。店主オグリさんも大好き!!な本とのこと。文庫版も存在するようですが、オグリさんいわく「東海林さだお本は、文庫になると、なんか安っぽくなっちゃうんですよねぇ」。その理由、よーくわかるような。この本は冬樹社から出版された書籍版。ソフトカバーのうえ、コンパクトなサイズで用紙も斤量の軽いわりにボリュームが出るものを使用している。手に持ったときの感覚がぜんたいに心地いいし、なによりラーメンを多角的な視点で熱く深く饒舌に語る濃密な構成内容を収めるのに、必然とも思える絶妙な判型なのです。20年以上前の出版だし、掲載された名店の多くは今はなくなっている。しかし、それがどうしたと感じるくらい、ラーメンを愛する論客の方々の想いが心に迫ってきて、編集者の企画力、手のこんだ装丁ともども、ただ圧倒されました。伊丹十三さんの映画『タンポポ』には、正しいラーメン道を説く重要なシーンがありますが、この本がネタ元になっているのは疑いようがないでしょう。


本書が提示する「ラーメン造形学」にならって、ラーメンをいただくのにベストな白磁の器を手に入れる。有田焼・大日窯の久保さんが故・久野恵一さんの指示のもと制作した丼。やはりラーメン大好きだった恵一さんが考える理想のかたちに、コバルトの線のみさりげなくそっと引いている。「絵付けをするな。線でまとめろ」とは恵一さんの恩師・鈴木繁男さんの助言。



器の内側のみならず、高台近くにもコバルト線が。しかし、正面から眺めると、この線は目に入ってこない。それくらい、さりげないのは、繁男さんの教えに沿った恵一さんの美意識から。こんな美しい器でラーメンを供する店は、たぶんこの地球上のどこにも存在しない。



だから、自分でつくります。鎌倉・邦栄堂製麺所の醤油ラーメンを買い、造形学に沿って、具はシナチク、ホウレンソウ、刻みネギ、海苔のみ。簡素に、麺の真髄を堪能。白磁がなぜ、ラーメンとの相性がよいのかも、身を持って理解できました。本の世界観も同時に味わい尽くせた気がします。

LEICA M-E , MACRO ELMAR90mm

この器「呉須線紋丼」はmoyaisで購入したものです