2017年4月8日土曜日

桜より木蓮


咲いたと思ったら、あっという間に散っちまう。せわしなくて厄介だねェ、桜は。華の短命に、はかない美を感じるなんて嘘だね。だいたい、古来、桜は山のなかで人知れず咲くもので、愛でる風習も、政治的なたくらみに由来しているっていうじゃないか。と、気持ちが荒れながら、お仕事として淡々と名所をめぐる。


桜にときめく一般的な嗜好に背を向け、花期のあまりの短さに呆れて(しかも、花自体はもちろん、ふだんの樹は佇まいがちっとも美しくない)、桜嫌いな人もぼくのまわりには少なからず存在する。うちの家人もそのひとりだし、葉山にアトリエ兼住居を構えていたモダンな画家、山口蓬春さんもそう。まっとうな美意識をそなえていたら、桜なんかに目もくれない、とぼくも強く思う。家人も山口さんも好きなのは、たとえば3~5月に愉しめる、木蓮の花。上品で香りもほのか、花の造形、あたりの空気感が魅力的。お堀から離れ、インド大使館前の木蓮に目を留めていた人を、心から賞賛したい。

と啖呵をきりながら、今宵は横浜・大岡川の夜桜を撮りに行ってしまうかも。業務遂行への忠誠心からですが。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH. f / 1.4