2017年10月22日日曜日

3Mかたつむりディスペンサー1930’


写真や文のレイアウトを考え、紙を切り貼りしながらデザイン指示書を制作する。その日常業務に欠かせない文具が3Mのマスキングテープ。このテープを使うためのディスペンサーは会社から支給される国産の味気ないものがずっと机にあったが、先日、北米のユーザーから譲ってもらった3Mの古いディスペンサーに替えた。バンジョー演奏家だったリチャード・ドリューが3Mのエンジニアに転じ、1930年9月8日に防水性で自在に貼ったりはがしたりできる画期的テープを世に送り出した。現在の製品にも痕跡が残る、かたつむり型のディスペンサーも彼の設計で同年代に製品化されたらしい。アールデコモダンな愛らしいかたちだが、鋳鉄でできた無骨なボディはずしりと重い。机上でびくとも動かない存在感がある。さすがに錆が浮いているが、十分に機能を保っている。


いかにも北米的なプロダクツの存在を六本木AXISのリビングモティーフで開催中の「水たまりの中を泳ぐーポスタルコの問いかけから始まるものづくり」で知った。展示の写真にあったのはマイクさんの私物と思われる1930年代のテープディスペンサー。当時の誰もが容易に買えたであろう日用品だ。製造から90年以上経過した今も北米の家庭やオフィスのどこかで働き続けている。e-bayでは中古品を手軽な価格で入手可能だ。高価なブランド品ではなく、ありふれた日用品をマイクさんは好んで創作に活用している。そんな嗜好に僕は惹かれる。京橋明治屋の裏、ビンテージビルにあったポスタルコ1号店では英国パーカーのさりげなく上品な筆記具の中古品を安価に並べていたこともある。ポスタルコのブランドロゴのスケッチ案にはパーカーを象徴する矢のマークが描かれている。モンブランでもペリカンでもラミーでもなく、パーカーを選ぶ。そのセンスに独特の洗練と上質を生む秘密があるのだろうか。マイクさんにパーカーが好きな理由をいつか尋ねたい。

SIGMA DP3 MERRILL 75mm f/2.8
LEICA M-E , MACRO-ELMAR90mm f/4