2017年10月5日木曜日

窓学展


10月9日まで表参道・スパイラルホール1階で催されている「窓学展」を観に行く。風と光を呼び込み、風景を眺める。この暮らしに寄り添う大事な装置について建築家や歴史や民俗学の研究者がさまざまな視点で考察していく。





ひとつのテーマをどう枝葉を伸ばして拡げ、掘り下げていくか、美意識をもって。そのヒントを展示から感得できた。居住空間や建築に興味ある人はきっと見ごたえある展示。天窓から自然光が降りるローマ時代の遺構のような空間をダイナミックに活用している。一部を除いて会場は撮影OK。上は窓による光量のコントロールによって産まれる製品。


個人的にとくに惹かれたのは、早稲田大学・中谷礼仁研究室による発表『柱間装置の文化誌と、写真家ホンマ タカシさんの窓をテーマにした展示。中谷チームは日本建築の香川県掬月亭の内部で光が時間の経過とともにどのように変質していくか深夜まで撮影。その光の情景を16分10秒の映像で誌的に美しく伝える。会場では掬月亭をはじめ、リサーチした場所の陰影をとらえたポストカードを無料で配布している。僕は写真と映像を観て、日本の伝統建築がもたらす深く繊細な陰影を、その場で体感したくなった。



ホンマさんはコルビュジエが設計したラ・トゥーレット修道院の窓を撮影。



その写真作品のそばでは、窓辺の様子を再現。写真の世界観に没入できる展示のやり方に感心した。自分の関心をどう工夫して伝えるか学ぶ。ホンマさんのコンセプトありきの撮影。枯れることのない創造性、企画力に刺激を受ける。


10月3日は建築家・研究者を主な対象とした窓学国際会議に運よく出席することができた。YKK APの大盤振る舞いにはかなりびっくり。窓文化の主核となる企業として大いにアピールする場になっていた。着いた席のまわりは著名な建築家が座る。僕は場違いではないかと感じつつ講義を拝聴。国立民族学博物館の建築人類学者・佐藤浩司さんの人類にとっての最初の窓は竪穴住居の天窓という推察はとても興味深かった。窓は光という心地いいものだけでなく、邪悪な者も侵入してくる。霊的な思考に共感する。上の写真はプリミティブな世界各地の住居をフィールド調査した際に用いた撮影機材。現場での克明な記録は1階会場で観ることができる。


この日最後に登壇したのはイタリアのデザイナー、建築家ミケーレ・デ・ルッキさん。哲学的で抽象的な内容は自分には理解しにくかったけれど、iPadでラフな絵を描きながらのプレゼン、幻想的なイメージビデオ作品に見入る。自分はアーティストでもあると言うルッキさんの「強さ」に圧倒された。ルッキさんの講義は精神の深いところに作用する気がする。窓の形態や役割など、窓のあり方について自邸のほか、町なかで目にするものへ、いっそう意識を働かせることになりそうだ。

SIGMA DP3 MERRILL 75mm , f/2.8