2017年11月23日木曜日

柴又の品格


今月の「寅さんの日」(毎月10日)も柴又を再訪。午後の到着となったため、昼まで駅前でガイドをしているKさんには会えなかったけれど、この街に暮らす芸人・野口寅次郎さんから連絡をいただく。口約束を気に掛けて心配の声を掛けてくる。いまどきそんな律儀な人はそうはいないだろう。寅さんが憑依したような、実在の優しきお節介者なのだ。妻を連れての散歩前に、まずは参道の高木屋老舗で一息つく。映画の現場ロケでは山田洋次監督をはじめとする制作陣、俳優の方々の休憩場として利用されていたところ。その理由は店でおいしい団子と大きな急須を満たすお茶でなごんでいると、おのずとわかる気がする。店の人、空間、供するもの。すべてに一貫した品格と美意識、筋をきちんと通す気概を感じる。参道沿いの多くの店のなかでも、監督や渥美 清さんにとって、ここが格別な意味をもつ場所だったにちがいない。きっと深い交流があったのだろうが、そのつながりを店の宣伝材料に使うことは決してしていない。地元住民には高木姓の人が多いという。僕の暮らす葉山一色界隈では角田さんファミリーのような、土地の名士が地域文化を牽引し、誠実な商売を続けている。その姿勢に多くの学びがあると敬服している。

HASSELBLAD 500CM ,CARL ZEISS PLANAR C 80mm , f2.8  T* 
KODAK PORTRA400