2017年11月25日土曜日

監督の美意識


柴又「寅さん記念館」では大船撮影所から移設された「くるまや(旧・とらや)」のセットを間近に観ることができる。ここではセットを構成する建具から部材、小道具まで美術スタッフ、ひいては山田洋次監督の行き届いた美意識に魅せられるだろう。撮影当時、ふつうに使われていた日用品。ごくふつうだけど、醜いものはひとつもない。そのリアルでいて、さりげない選択の妙が映像に永遠の美しさをもたらしている。


かたちや色を主張するモダンなものばかり配したら、その佇まいに気がとられてしまう。下手したら野暮に陥るかもしれない。ありふれているけれど嫌なものではない日用品が当たり前に置かれている。その演出に監督の粋を感じる。僕は監督の粋に通じる、ものの選び方、置き方のセンスを帝釈天参道、高木屋老舗の店内でも同様に見いだせた気がする。監督はこの店の空間感に惹かれ、物語の演出にも影響を受けたのではないだろうか。


ふつうだけど佳い。そのあんばいに、心地よく、温かく、くつろげる空間づくりのヒントがある。寅さん映画は学びがたくさんあるなぁ。

HASSELBLAD 500CM ,CARL ZEISS PLANAR C 80mm , f2.8  T* 
KODAK PORTRA400