2018年2月28日水曜日

とらやの雛井籠


妻の誕生日に銀座のとらやで菓子『雛井籠』を買って帰る。昼間に取り置きをお願いして夜の中央通りを歩いて店に寄る。そうして老舗の風格漂う空間で丁寧な接客を受け、高揚感とともに新橋駅まで歩く。この特別な体験じたいがハレの気分に浸らせてくれる。


パッケージもじつに気が利いている。とらやの美意識が貫徹されている。生菓子は昼前にすでに完売していたので、『笑顔饅』と『花干菓子』を組み合わせてもらう。


ミニマルな美に見惚れる饅頭は、薯蕷(山芋)の皮の食感と餡の甘さが絶妙に上品。視覚と味覚。ひとくち食べて、たちまちこの気品に心酔する。


和三盆でかたどった干菓子の造形と色彩。気持が華やぎ、同時に心が乱れた。梅や桜の花びらを前にしたとき、どう撮るべきか、ぼくはいつも悩み、途方にくれる。目前に広がる、至上の美を表現しようと追い求めても、いっこうに答えが見えてこない。とらやの菓子も同じで「お前はどこまで美をすくいとれるのか?」と問いかけられている気がする。

SIGMA DP3 MERRILL 75mm