2018年4月12日木曜日

たいせつな店の空気を吸いにいく


茅ヶ崎にあった雑貨店「サザン・アクセンツ」の上野朝子さんが語った「ときどき、自分にとってたいせつな店の空気を吸いにいく」という一言がずっと心に残っている。空間を満たす穏やかな空気感、洗練された物とディスプレイ。それらの美しい情景を定期的に、眼と心に留めていくことが自分の仕事にはかけがいのないことと言っていた。その一軒とは当時、葉山一色「かやのきテラス」の一角にあった「sunshine+cloud」だった。上野さんの言葉に強く共感し、僕も移転前の空間にはときどき足を運んでいた。現在、自分が最高に心地よくなれる一軒はと問われたら京橋「ポスタルコ」を挙げたい。日本人には真似できない独創的インテリア、心憎い洒落たディスプレイ、そして美しくモダンな製品群。マンハッタンに居そうなフレンドリーなスタッフの応対もあいまって、製品のクオリティと同様、いつも上質な時間を過ごし、気持ちいい空気を胸いっぱいに吸うことができる。


4月16日までは、マンハッタンの多才なアーティスト、タマラ・ショップシンによる展示コーナーが設けられ、彼女の著書も手に取って眺め、買うこともできる。購入したものは彼女のイラストをちりばめた包装紙でラッピングしてくれる。最新著書で冒頭に書かれた文章を和訳したペーパーを自由に持ち帰ることができるのも粋なはからいだ。デザイナー兼オーナーのマイクさんはこの本が伝えるニューヨークの日常を、日本の人に知ってもらいたいといずれは翻訳本を出版したいと願っているそう。タマラの著書のほかに、彼女の父親であり、マンハッタンでレストランを営むケニー・ショップシンの『Eat Me』も置いてあったが、残念ながら非売品。この本と店はマイクさんが好きなものとして、ずいぶん以前の『popeye ニューヨーク特集』で推奨されていた。のちにマンハッタンを取材する機会を得たのに、レストラン「SHOPSINS」を訪ねられなかったことを今も後悔している。

SIGMA DP3 MERRILL 75mm