mr.sasaki
縁起物にあやかりたい。そんな願いを抱いて郷土玩具を、イラストレーターの佐々木一澄さんが選んだものを主に少しずつ買っている。なんでもよいわけでは決してない。ポップだけれどファンシーではない。朗らかと稚拙の間には大きな違いがある。かたち、表情、色。つくり手が生まれもった感覚、あるいは師匠からそのまま引き継いだもの。郷土玩具にはつくり手の心と眼がありのままに映し出される。その絶妙なバランスをもつ魅力的な玩具を佐々木さんの心眼はきちんととらえて示してくれる。だから、ここ数年1月に青山のOPAギャラリーで催される佐々木さんの作品&コレクション展示と、連動した郷土玩具即売会は魅力的な玩具に出合える、僕のみならず多くの人に貴重な機会だと思う。先日には佐々木さんの知識と美意識にもとづいた選択をまとめた著書『てのひらのえんぎもの』(二見書房)が出版された。待望の一冊である。物と人への情愛が伝わる穏やかなイラストと優しい文章。佐々木さんらしい誠実とセンスがあふれている。ブックデザインも本人がおこなっていて、読みやすい書体が選ばれ、イラストのベストな配置がなされていることに人柄と才能がよく表れていると感じた。書籍の出版はシビアな側面もあるが、本人はほぼ納得してゴールまで疾走できたのではないか。取り寄せて、すぐに読了。そして佳き郷土玩具への知識を深められて充たされた。さて、年明けの青山に、どんな縁起物が待っているのだろうか。僕は佐々木さんの著書をヒントに、選ばれるものを想像し、そわそわしてきた。こんども朝いちばんに並んで、定めたひとつに手を伸ばすつもりである。楽しみだなぁ。
SIGMA DP3 MERRILL