2019年7月10日水曜日

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毎朝8時前、築地の仕事場に着くと、日立製の業務用掃除機CV-95H2と一緒に階上へ昇る。パープルブルーとグレイの不思議な中間色、素っ気ない造形が微笑ましい。洗練から離れているが、プロの酷使に耐える丈夫さ、特定の用途に徹したミニマルな仕様が佳い。スムーズに移動可能と思われるキャスター部の工夫にも現場で鍛え上げられたノウハウが注がれていそうだ。



武骨な道具然とした姿に惹かれる自分だが、L.L.BEANの定番ブーツ「ラバー・モカシン」はもっぱらレインシューズとして手に入れたものの、活躍の機会は少ない。都会の舗装路ではやたら滑るし、選んだワイド(EE)は相当に分厚い靴下を履かないと、足先がグラグラして疲れる。ビルケンシュトックのソールを買い足して敷いたものの、長時間の歩行では足や腰を痛めやすい。しかし、落胆してはいけない。これはぬかるんだ狩場の湿地やキャンプ場で足先を解放させ、くつろぐための靴で、僕が本来の用途ではない使いかたをしているのだから。
先日、車で県内の温泉リゾートに出かけたとき、歩く場面はほぼ無いからと、久々にラバー・モカシンを履いたら、車内と霧雨降る風呂上りのテラスで、緩いフィット感がなかなか快適なあんばいだった。このように格別な能力を限定的に発揮するものに、人間にたとえれば職人芸を思わせ、親密さを覚える。特殊な一足だが、晴れた日のふだん履きもしたいと夢想する男性は、レディースのDを選ぶとよい。幅広の足型でもあえて窮屈なサイズにするのが買い物のコツだ。これは数寄屋橋の東急プラザ銀座に入る「L.L. BEAN銀座店」のスタッフに教えてもらった。多店舗展開する同ブランドのなかでも日本では唯一のセレクトショップとして特別な役割を担っているらしい。なんとも気の利いた助言をする、40歳代後半と思われるその男性スタッフとは会話していると、さらに豊富な知識の奥底を聞きだしたいと直感が走る魅力的な人物だった。機会があれば、取材を申しこもう。

LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH. /f1.4
SIGMA DP3 MERRILL 75mm / f2.8