佃島に泊まった翌朝は八丁堀のCawaii Bread & Coffeeのテラス席で焼きたてのパンとオオヤミノルさんのコーヒーを愉しむ。運河の水の流れをぼんやりと眺める暮らしを想像し、憧れていると、毎朝7時半に一艘のプレジャーボートが通過していくことに気づいた。
乗船しているのは同じ人物。佃島から隅田川を経て亀島川に入り、その先の日本橋川に向かっている。ルーティンな営みから通勤の足としてボートを利用しているのかもと思い、風雅なライフスタイルが心底羨ましくなった。佃島の運河沿いで育った僕は水辺に住居をもち、家から船で仕事に向かうのが夢だったから。
中央区の運河には、じつは法規の抜け道があり、この映画みたいな生活を普通の人がわりと現実的に享受できたりする。2020年に向けて水上レストランやバーを認可し、誘致する運河ルネサンスという計画も始動している。海、川、運河を移動し、散策するシーンを夢想しながら口にした『クロワッサン・オ・ザマンド』が驚きのおいしさだった。心をうっとりと溶かす自家製アーモンドクリームの甘さと、サクサクしたパンの食感が絶妙で、ここ数年で、食べたパンのなかで、もっともインパクトを受け、顔がほころんだ。ちなみにこの店は特定のボートで乗りつけてパンを買うことも可能。体験したい人は東京ウォータータクシーか、舟遊び「みづは」のボートを利用してみよう。
LEICA M-E , SUMMILUX 50mm ASPH. / f1.4