2019年8月23日金曜日

peppers



葉山の家から海岸線づたいにドライブし、平塚で伊勢原のマウンテンサイド方面に曲がり、ひたすらまっすぐ向かうと、「PEPPERS DRIVE IN」の個性的な佇まいが眼に入ってくる。ずっと心に留めていたが、橋本倫史さんの著書『ドライブイン探訪』(筑摩書房)に背中をポンと押され、ランチタイムにはじめて訪問。



エクステリアでひときわ眼を惹くのは、1957年製ピンクのキャデラック。僕のクルマは2016年製の電気自動車LEAF。工業製品に夢を託した新旧の対比に見惚れる(笑)。ちなみにこのキャデラックはオーナーが子供の送迎に使っていたものだという。素晴らしい。



オーナーは僕の3歳年上の1962年生まれ。その年に公開された映画『アメリカン・グラフィティ』の世界観や、アメリカに興味を抱くきっかけになったエルビス・プレスリーをこよなく愛し、1950~1960年代のアメリカのムードに浸れるドライブインを形成した。



最初はその年代のグラフィックやプロダクトでインテリアを構成していたが、トイストーリーなどのディズニーキャラクターを加えはじめたら、テーマが混沌としてきたという(笑)。そのアメリカンなカオスを、甘いオールディーズのBGMを聴きながら眺める憩いに心が躍る。アメリカが豊かだった時代の雑誌広告が一面に、ラフに貼られる天井。作家・片岡義男さんが見上げたら卒倒するだろうか。



ゆったりとしたベンチシートの妖しい色彩と質感がたまらない。接客する朗らかな女性スタッフの笑顔も温かく素敵で、なごませてくれる。とても落ち着く空間。



コレクタブルなヴィンテージを飾るだけでなく、実用のものとして活用している。物選びのセンスも佳く、道楽や趣味をはるかに超えて、徹底して本気なところに共感する。



サーモスがこんなポップな製品を出していたんだなぁ。



メインメニューはカレー。物が多いのに、隅々まで清潔に保たれた店内と同じく、ルーの表層が磨きこまれたように滑らか。食べる人の顔が映るほど。ていねいに調理しているのが伝わるおいしさだった。辛さに加え、トッピングをいろいろ選べるのも愉快。



僕はナスやゆで卵、チーズ、コーンなどをチョイス。上のベーシックなルーに合わせると、こんな景色になる。コクのある味わいは懐かしい。沖縄本島の米軍基地前にある「CoCo壱番屋」で米兵たちが嬉々として多彩なトッピングを選び、自身のオリジナルに仕立てる様子を見て、「選ぶ」おもしろみを採り入れたのだという。そういえば、横須賀の米海軍基地前にも「ココイチ」がある。前を通りかかるたびに、米兵がふらりと出入りするシーンを見かけてきたが、人気の理由に合点がいった。



食後にコーヒーフロート。このボリュームがアメリカン。コーヒーの本格的な香りに、メニューの本気度を想った。たっぷり盛られたヴァニラアイスの丸さにときめく。その理由は後日にそれとなく明かしたい。



満ち足りてまったり余韻に浸っていたら、背後に飾られた一枚の写真に惹かれた。自分が座る場所で西陽の時間帯に撮られたもの。窓辺の装飾をあえて無にした潔さ、モデルの品性。これはもしや、ユナイテッドアローズのカタログかと想像したら的中。同社の6 rokuというブランドの2019年SSカタログだと、スタッフに教えてもらった。



このセンスの良さ、女性対象のファッションの訴求力に感嘆し、コーヒーをテーマに据えたビジュアルに魅了された。



このカタログが欲しくなって、オークションで落札。



非売品の紙媒体が取引される、便利な時代を享受。

LEICA M-E , 7ARTISANS28mm  / f1.4
SIGMA DP3 MERRILL 75mm / f1.4