葉山と同じくかつては政財界の別荘地だった大磯。品格と情趣ある静けさは今も保たれているように感じられ、穏やかな日々を想像して移り住みたくなる。数ヶ月ぶりに訪ね、この街の海辺で生まれ育った世界的なビデオカメラマンの親友が贔屓にする「はやし亭」で昼ごはん。10年前「湘南スタイル」別冊レストランガイド初号で取材させてもらったこともあった。
シャリシャリと食感の良いキャベツが添えられた、とんかつのおいしさは相変わらず。今回はもうひとつの定番、自家製あんみつもいただき、うっとりと深い感銘を受けた。とんかつと甘味、これは最高の組み合わせだと甘党の僕は思うけれど、意外と街なかの専門店ではないパターンではないだろうか。
余韻に浸って国道1号線沿いの名食材店「いづ常」まで歩き、その2階のカフェ「magnet」へ。大磯ならではの静謐な空間をお借りして、旅する骨董商kihachiさんがチベットで見いだしてきた美しいものを撮らせてもらう。夢心地で神々しいものに向き合いながら、脇に置かれたkihachiさんの日用リュックと店オリジナルの椅子に強く惹かれる。使いこまれて味のある緑に変化したプラダのビンテージと、鉄パイプで組まれたキャスター付きの椅子。無骨のなかに独自の洗練が感じられ、これらを選び、使い、作れる彼らの洒脱なセンスに少しでも近づきたいと願った。
SIGMA DP3 MERRILL 75mm / f2.8