copy
北米東海岸のミュージアム観光ガイドを制作中。その過程で、ワシントン・ナショナルギャラリーが収蔵するポール・セザンヌの絵画に眼が留まる。銀行家である父の日常を1886年に描いた作品。当時はパリで最新のメディアだった新聞を手にしている。筆さばきに惹かれるのはもちろん、帽子、ジャケット、パンツ、シューズ。濃紺とグレー、茶色が調和する普段着に魅せられた。左側はギャラリーが個人向けに配信する高画質画像を仕事場のカラーコピー機でプリントしたもの。右側は入念に色校正し、上質な用紙にCMYKオフセット印刷した『芸術新潮』の誌面。3~4年前にリリースされた普及機、しかもふつうのコピー用紙なのに、美術雑誌を陵駕して写真の細部を見事にすくいとっている。アンダーな領域の色もくっきり。あまりの違いに愕然とした。先日、品川区小山のリソグラフ・スタジオ「Hand Saw Press」の菅野さんから、コンビニに置いてあるものも含めて、今のコピー機の性能は凄いと聞いた。その言葉を感慨とともに思い起こした。気づいている人は気づいているマシーンのなにげない高性能。活かして写真表現の新たな可能性を探ってみようと思う。
SIGMA DP3 MERRILL 75mm / f2.8
"L'Événement" 1866 oil on canvas Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon