本業の職場から解雇され呆然。どん底まで失意した翌日、骨格ある造形に元気をもらおうと三浦市金田漁港そばの「讃々舎」へ。この立ち直りの速さが自分の長所。店主であり友人の高梨さんが心眼で選んだ古き佳き工藝を前に熱量たっぷりに話しこみ、いっときの享楽で現実逃避。
この日、まず心奪われたのは那覇にあった吹きガラス工房、牧港硝子製と思われる40年ほど前の特大ゴブレット。花瓶やカトラリー入れにも適した立派なサイズ、ビール瓶を再生したアンバーの色味、どっしりとした厚みに一目惚れして購入。
畳やテーブル上にずらりと並ぶ健やかで美しい物たちに眼を泳がせつつ直観で選び抜く。心眼を試されるような空間。たまらなく楽しい。李朝の建具は三角形の格子が独特の美的センスを表していて、部屋に無造作に立てかけたり、上に好きな物を置いて景色を愛でたらどんなに素敵だろうか。先日制作したフラードームのランプシェードとフレームのパターンがまるで同じ。その偶然が必然の出逢いに思えて胸の鼓動が高まった。欲しい。
玄関近くに何げなく置かれた、これまた特大の吹きガラス瓶が眼に入ったときは思わず驚愕の声が漏れ出た。吹きガラス瓶好きの高梨さんも初めて遭遇した物だと言う。
荒々しさと優美なカーブにどこか西洋的な気配が漂う。イラン製とされていたが、フランスの物ではないかと高梨さん。古いワインボトルかもしれない。よくぞ残ってくれたなぁと感動。彼が最近書き留めた小文にこんな感慨が書き留められていた。昭和時代と思われる沖縄の再生硝子(前述のゴブレットとは別の脚付きグラス)に骨董市で出合ったとき「硝子と言う壊れやすいものが(しかもいわゆる美術品とは違う雑器が!!)私の手まで辿ってくれた事は嬉しい限りです」。まさしく!
これも欲しい! 非売品だが、また見つけられたら販売を検討してくれるそう。めぐりあえたらさっと入手できるよう新たな仕事を探さなくちゃ。来週から淡々とハローワーク通い。
LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH. / f1.4