2015年9月29日火曜日

静岡市のいいところ #1 芹沢銈介美術館



手仕事フォーラム大橋正芳さんからのお知らせを見て、ぜひとも足を運ばなくちゃ!と急行した、静岡市、芹沢銈介美術館の展示。葉山からドライブして、東名高速を降り、まずは腹ごしらえで炭火焼きレストラン「さわやか」に入る。県内でしか口にできない、げんこつ型の丸いハンバーグがユニーク。テーブルに運ばれ、ジュージュー!と肉汁が飛びちるのがおさまるのを待っていただきます。この店から東名高速沿いに走れば、美術館のある登呂遺跡まではすぐ。





憧れの高床式住宅を水田、稲田ごしに眺めながらのアプローチ。




復元された弥生時代の住まい近くでは、当時の暮らしぶりを伝えるボランティアの方々が控えています。



当時の人がどのように火を熾していたか、体験させてもらいました。




杉と桧を素材にする道具。いにしえの人の叡智に感心。




金木犀が香る雨上がりの美術館へ。




白井晟一さんが設計した石を多用した建物は重量感たっぷり。





フラッシュを用いないこと、シャッター音を発しないことを条件に作品の撮影を許していただけました。芹沢銈介生誕120周年を記念した展示テーマは「暮らしに生きる文字」。芹沢の文字作品と合わせて、収集品である朝鮮民画を鑑賞することができます。




ぼくがとくに惹かれたのは、後者の朝鮮民画の方。1392~1910年の朝鮮王朝時代に朝鮮半島各地で制作された実用画。芹沢は朝鮮の優れた工芸品を280点収集し、その多くが朝鮮民画のコレクション。この美術館が収蔵する芹沢の集めた朝鮮民画は76点にも及ぶそうです。今回の展示では芹沢が選んだとっておきの民画をじっくり、たっぷりと眺めることができる。美の見識が備わるひとりの視点で選び抜いた素晴らしい作品を目にする至福に酔いしれました。



朝鮮民画のうち、儒教の教えを絵文字で表した「文字図」からなかなか目を離すことができませんでした。力まず、さっさっと筆を走らせたよう目に映る軽妙かつ流麗な線と画。洒脱な感覚で配した草花や鳥の姿かたちに心をつかまれます。いずれはこんな朝鮮民画を自分の暮らしの場に飾り、日々眺めたいと夢をみます。




以前、確か雑誌「民藝」の特集で観た、虎図のオリジナルも飾られていて感激。愛らしいけれど稚拙ではない。そのバランスの妙、やわらかな描きように心を奪われます。




工芸品もいくつか展示。芹沢がその造形のどこに感応したのか、ヒントをさりげなく示しています。




やわらかさのなかにある骨格とでもいいましょうか。健全な素朴さを表出しながらも、洗練さもひそむかたち。芹沢はもちろん、柳宗悦を魅了。民藝のいしずえとなる美意識が花開いた時代にさかのぼって旅したい。またいつの日か、現在のソウルをいまいちどさまよい、穏やかな美しさをたたえる工芸品に出合いたいと夢想。以前のリサーチで見当はついています。その日のために、先人の心眼の向けようを眼に焼きつけます。




鑑賞後は買わずにはいられない図録。芹沢の収集品をまとめたもの。いずれは15種類にまで増えていくそうで、これを求めたくて、今後も再訪する機会が増えそうです。


LEICA M-E  ,  SUMILLUX50mm ASPH.