2015年10月2日金曜日

ピンクのひょうちゃん


強い関心を抱ける対象との幸運な出合いにより、急速に探究に入れこみ、深遠の淵を覗きこむ。その最中、ほかの対象を見出すと、それまでの熱がたちまち冷めて、そちらに関心が移行。趣味・嗜好に関してはその繰り返し。かといって、心の奥底には興味の火がかすかにともっていて、不意に炎となって立ち上がることも。専門書籍を出版するほど夢中になっていた、海底からの打ち上げ物、遠方からの漂着物、海辺の生活の日用品など、海際に転がるものを拾い集めるビーチコーミングという趣味もしかり。眼をくまなく走らせるほどの熱意は失せたし、同輩との会合に参加することもない。けれど、視神経も心の働きも力が抜け、ぼんやりと歩く今もときどき珍しい物を眼に留めます。先日も海の家が基礎として砂を掘り起こした跡地に、艶やかなピンクの陶器の一部が眼に入り、手が伸びました。掘り起こすと、見たことのないシュウマイ用醤油容器が出現。消えそうな文字を読みとり、iPhoneで検索すると、崎陽軒ならぬ、楽陽軒のものであると判明。ネット上では逗子在住のネイチャーライター尚さんや、ウクレレバージョンのひょうちゃんをプレゼントしてくださった、鎌倉材木座のビーチコーマーさんが調べ、情報を公開されていました。近くの知人が真相を追究している事実が嬉しい。情報によれば、楽陽軒は現在の楽陽食品の前身で、ピンクのひょうちゃんは、戦後から昭和38年9月までの製造と推察されるそう。一昔前まで、燃えないゴミは川辺や海岸に捨てていた。その名残が人為的な偶然で眠りから覚めるわけですが、砂浜の数10センチ下に完品のビンテージがひそんでいると想像すると、これから散歩中の意識、視線の向けようもまた変わっていきそうで、心ときめきます。

LEICA M-E  ,  MACRO-ELMAR90mm