日本統治時代に建てられた古い建物の価値を文化遺産としていちはやく認め、新しい文化発信地として活用。この「文創(文化創造)」をテーマに掲げるスポットが台北にはいくつかあり、いずれも若い世代を主に、人気を集めています。東京もぜひ見習ってほしい国の働きかけ。
その文創スポットのなかでも、とくに惹かれたのが、松山文創区。1937年にタバコ工場として建設された空間を展覧会やアート活動をおこなう文化施設として見事に活かしていて感心しました。
その文創スポットのなかでも、とくに惹かれたのが、松山文創区。1937年にタバコ工場として建設された空間を展覧会やアート活動をおこなう文化施設として見事に活かしていて感心しました。
訪問時は、施設のひとつ「設計館」にてドイツデザイン展が開催されていたのでドイツ工業製品好きとしては見逃すわけにはいきません。
入場料はとても安く、展示物の撮影は自由。大らかな空気のなか、じっくりゆったりと鑑賞できます。
通路の所々に、椅子やテーブルが置かれ、気ままにくつろげる配慮もいい。
ドイツ製品は、ドイツ工業デザイン界の重鎮、ディーターラムスさん設計のブラウン製品をはじめ、新旧のものを陳列。
展示数と手法はちょっと物足りないものでしたが、学芸員によるデザイン解説に、熱心に耳を傾ける学生たちの姿も見られ、台湾の人のデザインへの関心と意識の高さが伝わってきました。
展示室は3つあり、2つめの展示室には各国の工業デザイン製品も展示。並べかたはややざっくりとした印象ですが、実際に座れる家具もあったり、手に取って読むことができる文献が充実しているのが親切。ちなみにappleのiPhoneは台北市の隣、新北市に本社を置く、Foxconn社が製造の大半を受注(製造は中国大陸本土)。さらに今後は台湾のPegatron社が製造を主に行うとか。デザインと品質の高さを何より重視するappleが、台湾の企業との蜜月を築いてきた背景について深く知りたくなります。
台湾といえば自転車。米国の有名ブランドも台湾に生産拠点を置いて久しいですが、自国デザインのブランドも魅力的。
台北市民の足といえばスクーターが思い浮かびますが、レンタル自転車YouBikeに乗る人たちの姿も多く見かけました。
現況では、登録にSIMフリーのスマホなどを所持する必要があるなど、ビジターが気軽に利用するにはやや敷居が高いのですが、次回の訪問時には乗りまわしたいなぁ。日本よりはるかに先進的な素晴らしい移動システムだと思います。
使いこまれたスクーターが日常の移動手段となっている一方で、電動スクーターSmartscooterも製品化され、すでに販売が始まっています。アンテナショップでは試乗もおこなっていました。デザイン性と利便性が高い新しいものをすぐに実用化していく。そのスピード感に学ぶべきものがあります。
台北で実はいちばん観たかったもの。それはかつて民藝の始祖、柳宗悦さんや河井寬次郎さんらが台湾へ工藝調査をした際、魅せられた竹の家具。庶民の日用品として使われる椅子や棚に触発され、河井さんは京都の嵯峨竹で竹家具をデザインされました。以前はごく普通に見かけたであろう竹の家具を、見て触れたいと願っていました。あわよくば、使いこまれたものを売る場所にも出合いたい。しかし、今回は残念ながら、その機会が得られませんでした。これは、コンスタンティン・グリッチさんによるデザイン。特殊な加工により、有機的なかたちを実現しています。河井の家具に刺激を受け、シャルロット・ペリアンさんが手がけた竹製シェーズロング(LC4)を彷彿とさせますが、アイデアソースにはきっとつながりがあるのだろうと想像します。
設計館を出たら、すっかり日が暮れていました。隣接する閱樂書店から漏れ出る光が温かい。中では何かのイベントが催されていました。
池に映る街の灯り。台北随一のムーディな場所。
池を望む通りには、洒落たカフェ、パティスリーが並ぶ。いわゆるトレンディなスポットっぽい。じっくりと探索してみたい欲求が沸き立ちましたが、夜市の取材が控えているので、足早に駆け抜け、次の目的地へと向かったのでした。
LEICA M-E , SUMMILUX50mm ASPH.