先週は台北を取材してきました。バスや地下鉄も利用しながら、市内のほぼ全域を歩きまわる旅。11月だというのに、夏のような暑さ、湿度に包まれ、全身汗だくに。移動中、急く気持ちを鎮めようと、お茶を飲み、心休めていました。台北で最も惹かれた空間、それは茶藝館と呼ばれるティーサロン。極上の烏龍茶を最上の方法で味わう経験ができます。
なかでも、謝小慢さんが育った場所に日本統治時代の家屋を移築して営む「小慢」では恍惚とした時間を過ごせました。モダンな大理石の床はもともとの家のものだとか。
ほんのりと控えめな温かな色の灯り。インテリアの隅々まで美意識を持って構成されています。
写真が暗いと感じらるかもしれませんが、肉眼に近い空間感をお伝えしたくて、あえて明度を補正していません。骨董も愉しむ小慢さんは、インテリアコーディネートのお仕事もされているそうです。店の近所にはマンションをリノベーションしたゲストハウスも用意されています。
視界に入るものすべてに見惚れ、ため息が出ます。
美を感得する才はもちろんのこと、物を配置するバランス感覚が絶妙。雑誌やガイドブックでもおなじみの店ですが、実際の光の状態で見る景色はまるで違います。実際に身を置くことで、いっそうと美しさを愛でることができると思います。
小慢さんは日本語堪能な上、日本人のスタッフ(写真)が応じてくださるので、言葉の心配は無用。台湾茶を美味しくいただく作法も教えてくれます。
茶器の扱い、湯を注ぐ流れを知ったら、あとはひたすらくつろいで茶を味わい、沈思。体と心の内面がどんどん平穏さで満たされていきます。地元の方はスマホをマナーモードにせず、LINEなどの着信音も音量マックス。大声で受話器におしゃべり。初めは静寂な空間との違和感に、あっけにとられますが、その大らかさが南国特有のゆるさ。かえって、緊張感がほぐれる気がしちゃう(笑)。悠然と郷に入ります。
お茶うけのドライマンゴーや綠豆糕という菓子が素晴らしくおいしい。感銘を受け、この日に愉しんだ茶葉とともに分けていただきました。茶の友文化、相当に高いとみました。いい国だなぁ。
小慢さんが親交が深く、こちらで展示もおこなう、松本の木工工芸家、三谷龍二さんの木工品も扱っています。訪問の数日前に個展が終わりましたが、台湾茶のためにつくったという茶さじや、茶托もまだ在庫がありました。漆をそっと施したもの。日本ではたちまち完売してしまうはず。残っていてよかったと胸を撫でおろし、内心に大きな興奮を秘めながら求めました。物欲だけは鎮めることができませんでしたー。
LEICA M-E , SUMMILUX50mmASPH.