2016年3月14日月曜日

BOOK COVER


30年ほど前、門前仲町にあった書店で働いていたとき、一日数百枚は紙のブックカバーを折り、本を包んでいました。たいていのお客さんがカバーを所望し、そのカバーで書籍がパッケージされることを楽しみにされているのを知り、実体験を通じて日本独自のカバー文化への知見を深めたのでした。ごく限られたスペースなのに、その小さな書店は売り場面積に対しての売り上げが当時、都内でトップ。早朝から深夜まで目が回る忙しさでした。立地に恵まれたことが第一ですが、第二にオリジナルで制作した、色のバリーションが豊富で、シンプルなグリッド線のデザインを施したブックカバーの存在も繁盛の大きな要因のひとつだったと思います。かくいうぼくも、本を持ち歩くときは、たとえそれが図書館で借りたものでも、必ずカバーをかけています。他人にどんな本を読んでいるのか見られたくないという羞恥の気持ちというより、本の表紙を運搬中に傷めたくないから。革や丈夫な和紙、布などいろいろな素材のカバーを持っていますが、ときどき定型サイズよりやや大きい、変型版の本があり、所有カバーがフィットしません。先日、鎌倉「古書ウサギノフクシュウ」にて入手した、雑誌「クウネル」(リニューアル前のヴァージョン)のアートディレクションで知られるAD有山達也さんの本もそのパターン。編集者や書き手の意図を汲む以前に、どう本のデザインに向き合っているのか、内面を語る内容。すぐに通勤途中に読みたいと思いましたが、文庫本より少しだけ天地サイズが大きい。しかも表紙の用紙が柔らかく傷みやすいものを使っているため、急遽、書店の紙袋を活用してカバーを仕立てることに。紙を開いて本のサイズに合わせて適当にハサミで切るだけ。あとは天地の縁を内側に折り、表紙を差し込むだけ。数分で、ハンドメイド感満々のカバーが出来上がります。この方式ならば、洒落た包装紙など捨てるのを惜しむ紙を活かしきることができます。単純ながら嬉しくなれるこの作業が楽しかったので、別の本でもやってみることにします。
⇨明日に続く。 

追記:鎌倉の出版社「港の人」は良い本を続々出していてワクワクします。鎌倉生まれの本は鎌倉で買いたい。

LEICA M-E , MACRO-ELMAR90mm