数年前まで渋谷は東京でいちばん近づきたくない町だった。人混みはすごいし、常にどこかで再開発している。ざわざわと気持ちが波たった。しかし、仕事で頻繁に足を運ぶ今は、この町特有の変化の速さに刺激を受け、それを好ましく思えるようになった。忌避できないものを無理やり受け入れる。自己防衛の心の働きかもしれないけれど。
先日は、某私鉄企業からの依頼で駅前の、よりによって人酔いするほどの混雑のなかに入り撮影することに。
人の波にレンズを向けるのだから、肖像権が当然問題になる。そこで減光フィルターを用いてスローシャッターをきり、顔が判別できないようにする。激流にひとり三脚を立てて佇む僕の行動を誰一人気にせず、僕の体に触れることなく、高速で通り過ぎていく。その無関心ぶりがちょっと未来的で現実感がない。欧米人がこの町に惹かれるのは、そんなクールな人の気配、空気感なのだろうか。
LEICA M-E , ELMARIT28mm 4th EDITION f/2.8 with KENKO ND FILTER
SUPER WIDE-HELIAR ASPH. 2th EDITION f/4.5