仕事場周辺のヴィンテージ建築ウオッチングが当分、マイブームになりそうな気配。はじまりは、通勤途中、目に入った一冊の本でした。最寄駅の東銀座駅そば。ランニングウエアなどテーマ性をもったセレクトショップ「en route」のショーウインドウ。その窓辺に置かれる選書を日々確認するのが毎朝の愉しみ。先日はちくま文庫の「建築探偵の冒険」が飾られ、にわかに東京の歴史建造物をめぐる散歩に関心を抱いたのでした。日常空間の周辺に、はたしてどれほどの古い建築物が残存しているのか知りたくなり、まずはこの本をはじめ、東京の文化遺産に光を当てた本をいろいろ読み漁る。しかし、この方面の書籍に取り上げられた物件の多くはすでに解体されていて、時すでにおそし。なかには、つい最近まで生き残っていた建物が近所にあったことを知り、地団駄を踏む。
地域開発で急速に姿を消す建物を少しでも記憶と写真に留めておきたくて、つい先日出版された「東京旧市街を歩く」を買いに、日本でいちばん好きな書店、銀座「LIXILブックギャラリー」へ。
INAXが運営する、建築、デザイン、工芸、旅などを中心に選んだ本が揃う。選択眼、店内の広さ、陳列の手法すべてがいつもぼくの心をときめかせてくれる。
当然のように求める本も美しい配置で置かれていました。「森岡書店銀座店」のオーナー、森岡督行さんの著書。東銀座、日本橋、神田など中央区、千代田区に現存する歴史的建造物が生む繊細な光の陰影をとらえ、高い美意識をもって数多く収められている。写真家がどの建物の造形と光の状態に眼が感応したのか、ページをめくるごとに、ため息を漏らし、心酔。一見、写真集の体裁ですが、深い洞察と嗜好がすべてのページからにじみ出てきて心を捉えられます。資料としても貴重ですが、モノクロームで風情がより浮き上がる建物は、2015年9月現在、すべてを実際にその場に立って鑑賞できる。その意味でも賞賛すべき本。ぼくは、久々に迷うことなくレジに直行した一冊です。
敬意があふれ、森岡書店のはいる鈴木ビルを訪問。仕事場から歩いて数分。木挽町、かつての築地川沿いで風格を保つ昭和4年竣工の建築。
デコボコのレンガ、風雨にさらされた壁のオーナメント。細部に宿る造形。創造性のオリジナリティに感嘆し、リスペクトの心情で胸がいっぱいになります。
LEICA M-E , MACRO-ELMAR90mm